競争力を失いつつあるトヨタ自動車

日本が誇る企業の一つ、トヨタ自動車が『EVに関する戦略の見直しを検討している』と、10月24日の報道にて周囲を驚かせました。

あくまでも私見ながら、『世界のEVへの温度感とスピード』をトヨタが見誤ったというのが今回の報道の根本的な要因だと考えます。

世界ではEVの想像以上に普及が進んでおり、『世界の潮流から外れる、且つ、トヨタの将来的な地盤が崩れかねない』という危機感から来ているものであることは想像に難くありません。

今回のトヨタの判断は、これまでの計画をリセットして1から見直しを図り、競争力のあるEVを開発することが急務になったということになります。

トヨタは他メーカーと比較すると、
・EVはそもそも顧客が欲しがっていない
・ガソリンはまだまだ残る

という観点から『ハイブリッドやガソリン車を主軸に残しつつEVや水素も開発する』というマルチな戦略を展開しています。

トヨタ社長の豊田章男氏は『一般社団法人 自動車工業会』の会長も務めており、そういった立場からも、関連する数多くのサプライヤーや取引企業などの雇用を守るという配慮が急激な電動化に踏み切れない要因ともなっていると推測します。
(雇用については実際に株主総会やメディア、You Tubeなどで同様のことを語っています)

『今を守るのか、未来を守るのか』

非常に難しい選択ではりますが、結果としては『今を守る配慮』が逆に作用してしまい、将来的に多くの雇用を失う可能性が出たことは否めない事実となっています。

■ゲームチェンジャーとなったテスラ

トヨタのこういった経営判断を下すキッカケとなったのはイーロン・マスクCEO率いるテスラです。

つい4~5年前まで世の中がEVに懐疑的であった時期に、テスラが登場し、以降、急激に企業規模と販売台数が拡大していきます。

現在、北米の高級車マーケットにおいては既にメルセデスやBMWを抜いて販売台数1位となっています。

テスラの勢いはとどまることを知らず、
時価総額が他の自動車メーカーの時価総額合計値よりも大きくなるなど、既存メーカーが無視どころか、追随せざるをえない状況にまで状況が一変しています。

また、中国の既存メーカーや新興EVメーカーが、中国という巨大市場を背景にテスラを追随しており、EV販売台数においては中国が世界第一位となっているほどです。

そういった中でトヨタは、満を持して発表した『bZ4X』の北米販売が出遅れたために補助金獲得のチャンスを失っています。

更には、中国国内では独自技術でEV販売に漕ぎ着けることができず、中国メーカーからの技術提供を受けて『初のエレクトリックセダン』を発売したというのが実情です。

(こういったところからも、日本は技術大国という地位から陥落しつつあります)

世界では、
・ステランティス:欧州にて小型車分野EVを投入
・アメリカ自動車メーカー:北米にてピックアップトラック等の市場が好むEVにて活性化
となっています。

こういったEV過渡期にトヨタが存在感を発揮できていないのは危機的状況で、EB戦国時代に競争力を失っていくのではという懸念が広がっています。

ちなみに、テスラと『同性能・同価格帯』のEVを発売したとしても、ここからEV市場のシェアを獲得するのは難しいと考えます。

もし対抗するのであれば、『より高性能且つ、より安価なEV』でも開発しない限りは、状況を打破することは困難だとも考えます。

■稀に見る自動車業界の変革期

壊れないという『信頼性』や、ハイブリッド技術による『燃費向上やエコ』といった環境性能にて消費者からの確固たる地位を築いてきたトヨタですが、
このままでは変革期に対応できないまま『過去の自動車メーカー』となってしまう可能性が無きにしもあらずといった状況になっています。

今後のトヨタの『戦略見直し』については価格競争力の高いEVを作るということにつきます。

既に、2021年11月に発表した『2030年までにEVを30車種ラインナップ』するという計画にもテコ入れが入っており、
噂レベルではあるものの『クラウン(EV版)』等の開発がストップされたと報じられています。

■今後のトヨタ

トヨタはEVプラットフォームを既に持っていますが、
これは上述したように、トヨタの戦略によって、既存のガソリン車やハイブリッド車と『同じ製造ラインにてEVを生産』できるように『e-TNGA』というプラットフォームを使用しています。

現在のEVプラットフォームでは製造自体がコスト含めて非効率的となり、価格競争力のあるEVを世に送り出すことが困難になります。

よって、今回の『戦略見直し』にて、これまでの計画を白紙に、1からEVを開発しようという判断にいたっているのだと推察します。

これはひとえに

・テスラや中国を起点として、EVの普及率が想定よりも早い
・テスラなどのEV開発メーカーが新技術を導入して競争力を強めている

が原因だとされています。

つまりトヨタは、他社が『本気』でEV開発に取り組んでいた時期に、
『どちらに転んでも大丈夫』なようにリソースを多方面に割いた結果が今回の『戦略見直し』になったというのが事の顛末となりそうです。

携帯電話が『ガラケー』から『スマートフォン』に移行していったように、自動車業界においても世紀の変革期に突入しています。

他メーカーを後追いに向けて、ようやく重たい腰を上げたトヨタが2~3年で地位を挽回するのは容易でないのは想像に難しくなりませんが、
世界のトヨタがどこまでEVにて戦っていけるのか、同じ日本人として応援する気持ちもありつつ、見守っていきたいと思います。

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【本日の名言】『 モンテーニュ / 哲学者 』

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目指す港がないような航海をしていたら、どんな風が吹いても助けにならない。

目指す港をわかりやすい例に置き換えると

・企業理念
・営業目標

といった具合でしょうか?

どんなんい強い風が吹いていようとも、
落とし所がなければ、どこまで進んでいけばよいのかわからぬままに迷走してしまいます。

そういったことからも、
指針を示す船長などの存在がとても重要だとする名言でした。
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