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特殊部隊

GIGN 国家憲兵隊治安介入部隊 フランス国家憲兵隊の特殊部隊

世界でも最も経験豊富な対テロ部隊

National Gendarmerie Intervention Group(通称:GIGN)は日本ではギグン(ジェイジェンとも)と呼称されるフランス国家憲兵部隊のエリート特殊部隊です。その任務は、テロ対策、人質救助、国家脅威に対する監視任務、政府要人の保護、犯罪組織に対するターゲティングと多岐に渡ります。

GIGNは黒い九月事件とも呼ばれるミュンヘンオリンピック事件での大虐殺後、1974年に設立されました。当初は非常に微妙な状況での人質救助に特化した比較的小さな戦術部隊として作成されましたが、その後任務の幅は拡大され、今では400人近い隊員からなる多様性に富んだ部隊に成長しました。GIGNはフランス領土内での活動をフランス国家警察と共有しています。

GIGNの本部はパリ近郊にあるヴェルサイユのサトリ―内にあります。その任務活動のほとんどはフランス国内で行われますが、フランス軍で従軍活動を行っている部隊は世界中に展開されます。その任務は極秘であり、隊員の写真が公にさらされることは許可されていません。GIGNはその設立以来、1800以上のミッションに参加し、600人以上の人質を救出してきた、世界でも最も経験豊富な対テロ部隊の一つとなりました。

1994年12月のマルセイユマリグナネ空港でのエールフランス8969便ハイジャック事件の成功がGIGNを一躍有名にしました。Xserver Business

主な活動内容

テロ対策

人質救助

武装、または危険人物の逮捕

刑務所暴動の解決

犯罪者、テロリストの監視

軍事的特殊作戦

政府職員の保護

重要な局面での防衛活動(戦時国の大使館等)

訓練

設立の経緯とその変遷

1973年、ミュンヘンオリンピック事件での虐殺や、その他の様々な出来事をきっかけにパリ近郊のメゾン・アルフォールにてGIGNは設立されました。設立当初はECRI(Équipecommandorégionaled’interventionまたはRegional Commando Intervention Team)という名称で、1974年の3月にクリスティアン・プロトーの指揮下のもと運用が開始され後にGIGN1と呼称されます。設立されて10日後には最初の任務が遂行されました。実はGIGNという名称の部隊はフランス南西部のモンマルサン、機動憲兵隊第9/11空挺中隊内に同時に設立されていました。しかし1976年にプロトーの指揮下の元、二つの部隊が統合され、名称はGIGNに統一されました。

GIGNの初期は15人でしたが、1976年には32人、1986年には78人、2005年には120人に増加しました。1982年には現在のヴェルサイユのサトリ―に移りました。

1983年に共和国大統領安全保障グループ(GSPR)、1984年には国家憲兵隊空挺介入中隊(EPIGN)が設置され、GIGNとこれを指揮する機関として特殊安全対策郡(GSIGN)が設立されました。また時期を同じくしてGISAと呼ばれる専門のトレーニングセンターが作られました。

2007年には大規模な再編成が行われ、元のGIGN,EPIGN,GSPR,及びGISAはGIGNとなり、合計380名の部隊なりました。

こうして再編された部隊は単なる名称の統一ではなく、以下の3つの目的を共有しました。

・指揮系統と制御機能の強化

・より効率的な任務実行の為、情報の共有、共通のトレーニング、および強力なサポートの提供

・ベスラン学校占拠事件規模の大規模な人質救出や攻撃などの難しい状況を攻略できる隊員の能力向上

2009年、憲兵隊はフランス軍の一部でありながら、内務省に所属していました。内務省は国家警察も同時に監督しています。憲兵隊の任務は小規模な町や農村部、特定の軍事任務を担当し、国家警察は主要都市や首都圏での任務を首都していたたため、各部隊の任務範囲に交わりはありませんでした。しかし新しい指揮系統が構築されると、GIGNはフランスの軍事的な地位の向上のとともに、フランス国外での軍事作戦にも従事することが出来るようになりました。

GIGNと国家警察のエリート部隊であるフランス国家警察特別介入部隊(通称:RAID)の活動の調整はUcofi(Unitéde coordination des force d’intervention)と呼ばれる共同組織によって処理されます。GIGNとRAIDが共同で任務に従事する必要がある場合、”リーダー/フォロワー”プロトコルと呼ばれる手順が彼らの中で共有されます。主要で動くリーダーとなる部隊をフォローする手法となっています。

創設以来、グループは1800以上の作戦に参加し、600人以上の人質を解放、1500人以上の容疑者を逮捕してきました。作戦中に二人、訓練中に七人の死者を出しています。二人の死者は武装した精神錯乱者の鎮圧時に犠牲となりました。

2011年12月9日、フランス国防省の政治家、ジェラール・ロンゲはリビアのハルマタン作戦に参加した部隊に十字勲章を授与しました。

2013年7月31日には、アフガニスタン戦争に2001年より参加した彼らに二度目の十字勲章を授与しました。

2015年1月7日から9日に起きたフランスでのテロの際には、RAIDと共に迅速に対応がなされました。同年の6月功績をたたえられ国内秩序に関しての表彰を受けます(Medal for internal security)。その後、部隊の隊員は飾緒状のフラジェールの着用を公式に許可されることになりました。

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部隊編成

GIGNは現在2つある本部の元、6つの部隊で組織されています。

攻撃部隊(Force Intervenyion(FI)元のGIGN)

約100人の男性隊員が4つの小隊に分かれており、そのうち2つの小隊が常時警戒任務あたっています。小隊は指揮官の元、個々のチームにさらに細分化されます。2つの小隊は高高度での任務に特化し、他の2つの小隊は水中任務に特化した部隊となっています。

観察および探索部隊(Force Observation/Recherche(FOR)元のEPIGN)

司法警察の活動に関連した偵察任務やテロ対策に特化した男女40人からなる部隊となっています。

防衛および、セキュリティ部隊(Force Sécurité/Protection(FSP)元のEPIGNおよびGSPR)

65人の男女から構成され、部隊方針の策定や機密の保護を専門とした部隊となります。

大統領の警備部隊(元GSPR)

GSPRはもともと憲兵部隊でしたが、現在は警察と憲兵隊の共同部隊となっています。主な使命は大統領の厳重な保護となります。

作戦支援部隊(Force Appuiopérationnel(FAO))

特殊な技能(長距離射撃、突破、攻撃に対して求められる知識工学、特殊装置の取り扱い等)による支援部隊となります。

訓練部隊(Force Formation(FF))

この訓練部隊にはGIGNの隊員だけでなく、憲兵隊や外国人兵士の選抜、訓練、通称リサイクルと呼ばれる再訓練を主にしています。

 

上述の6つの部隊から構成されるGIGNですが、女性の隊員は攻撃部隊を除くすべての部隊に存在しています。

GIGN内には長距離射撃、ブリーチング、監視、偵察、要人警備、高高度降下低高度開傘(HALO/HAHO)による自由落下、ダイビングなどの戦術的専門グループが存在します。

ヘリコプターは主にフランス警察のヘリコプターによってサポートされます。大規模な戦術的展開が必要な為、そのサポート組織のGIHは空軍との協力でSA330 PUMAヘリコプターがビジャコバレー空軍基地より提供されます。GIHは2006年に設立され、2008年からはRAIDのサポートも任されています。

13の地域に展開されるGIGNの各部隊(通称:Antennes GIGN)はフランスの首都圏及び、海外での活動に従事します。PI2Gとして認知されていた国内部隊は、2016年4月にGIGNの一部として指定を受けることになります。GPIという名称で活動を行っていた海外専門の部隊もまた、2016年の7月26日にはGIGNの一部として指定されたという経緯があります。2016年の時点でGIGNの部隊はフランスの6つの大都市、ディジョン、ナント、オランジェ、ランス、トゥールーズ、ツアーに存在し、他の7つは海外の、グアドループ、マルティニーク、フランス領ギアナ、レユニオン、マヨット、フランス領ポリネシア、ニューカレドニアに拠点が置かれています。またフランスの各原子力発電所の現場に設置されている20の核警備の部隊(通称:PSPG)はGIGNの部隊ではなく、その監視下で運用されている部隊です。お名前.com

作戦群

GIGNのもっともよく知られている作戦群の一部は以下の通りです

・1976年にジブチ近郊のロヤダにてソマリア沿軍解放戦線(通称:FLCS)が人質にしたスクールバスの30人のフランス人生徒を解放。2人の人質の子供が殺害されたため、部分的には成功に至りませんでした。

・1979年にサンサルバドルのフランス大使館から外交官の救出を計画。攻撃が行われる前に犯人は降伏しました。

・1979年11月から12月にかけて、サウジアラビアのメッカでグランドモスクの支配権を取り戻すためにサウジアラビア当局に助言を行う。

・1980年にはフェッシュホテルでコルシカ島の民族解放戦線のコルシカ人テロリストを逮捕。

・1982年8月、アイルランドのヴァンセンヌ事件で容疑者のアイルランド人テロリストを逮捕。

・1988年5月、ニューカレドニアのウベアの洞窟内の人質の解放に貢献。

・1992年のアルバートビルでの冬季オリンピックの警備。

・1994年12月にマルセイユでのエールフランス航空8969便の乗客乗員229人の解放救出。旅客機は4人のGIAテロリストによってハイジャックされました。アルジェリア政府との交渉中に飛行機がアルジェリアを離陸する許可が出るまでに3人が殺害されましたが、救出活動では一人も死者を出すことはありませんでした。負傷者は25人(乗客13人。乗組員3人。GIGN隊員9人)。ニュースがライブにて救出劇を大きく取り上げたためこの作戦は広く報道され、有名になりました。

・1995年のコモロでのクーデター未遂事件。MERC兵のボブデナードとその一味を逮捕。

・2009年から2011年のアフガニスタンでのフランスのPOMLTの戦術的支援活動。

・2011年のハルマタン作戦中のリビアでの活動

・2015年11月20日。マリのバマコにあるラディソンブルホテルでのアルカイダ人人質事件への介入。しかしGIGNが到着したときには米国およびフランスの特殊部隊の支援を受けていた地元当局によって既に解決されていました。

・2018年3月のカルカソンヌとトレブのテロに関与したテロリストへの攻撃。この時、元EPIGNの指揮官であったArnaud Baltrameは人質との交換を自発的に申し出て、テロリストに武装解除を促しましたが殺害されてしまいました。

採用選考とトレーニング

受験者は1週間の事前先行審査を受ける必要があります。審査に通過したものは、射撃訓練、長距離射撃訓練(この訓練は世界で最も優れたものとみなされています)、空中展開を含む14カ月のトレーニングプログラムと白兵戦訓練を受講します。精神力と、自制心は、体力に加えて重要な評価となっています。他の特殊部隊も同様に、訓練は特に初期段階では高いストレス下に置かれ、7~8%の受験者だけが選考を通過することが出来ます。下記が訓練内容の主なリストになります。

・各種武器の取り扱い

・戦闘射撃訓練

・長距離射撃訓練

・高高度降下低高度開傘(HALO/HAHO)による自由落下訓練、パラグライダー、ヘリを使った空中任務の訓練

・水中活動、水中戦闘、ダイビング、船に対する攻撃訓練

・白兵戦訓練

・おとり捜査、スニーキング訓練(調査のサポート)

・潜入、脱出テクニックの習得

・爆発物処理(EOD)及びCBRNの解除訓練

・熱帯、北極、山岳、砂漠での環境下でのサバイバル、および戦闘訓練

・交渉、外交スキルの習得

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武器と車両

 

 

 

 

 

 

 

 

・ピストル:グロック(主に17/19/26シリーズ)およびシグザウエル(SP2022)

・リボルバー:Manurhin MR 73およびSmith & Wesson(モデル686)

・サブマシンガン:MP5、MP7、およびFN P90

・ショットガン:レミントン、フランキ、ベネリ

・アサルトライフル:Heckler & Koch(HK416、HK417、G36)、Swiss Arms( SG 550、SG551、SG552)、2017年以降は7.62×39mmでチャンバー化されたCZ BREN2。セレモニーにはFAMASを使用する事もあります。

・スナイパーライフル:.308および.338でチャンバー化されたL96A1、または12.7×99mmでチャンバー化されたPGMヘカートⅡ。

・その他:ルノーシェルパ2やシボレースワテックHARAS(高さが調整可能な突撃強襲用の梯子を装備)、SUV車(Centigon Fortress装甲)などの様々なタイプの走行車両

モットー

2014年まで:自身を顧みず他者の命を救う

2014年以降:生きて兵役に身を置き続ける事

GIGNはフランス軍の一部であり、海外での戦闘地域に派遣されますが、平時は主にフランス国内での任務に従事しています。人間の生命と規律(火と呼称される)を尊重し、設立当初からメンバーに常に教えられてきました。また、新人にはこの価値観を忘れないよう.357リボルバーが伝統的に渡されています。

 

ビデオゲームや本や映画の題材でも非常に人気のあるGIGNですが、彼らの活動は非常に活発かつ広い分野に及びます。世界で最も経験豊富と呼ばれ、その射撃訓練は世界一と呼ばれています。黒の戦闘服に身を包む彼らはフランス国内の治安維持にとどまらず、常に世界の紛争の最前線で展開されている特殊部隊なのです。
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出典:GIGN

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