■長期的には中国依存脱却は正解かも
・ジープ
・フィアット
・クライスラー
・アルファロメオ
・シトロエン
・プジョー
上記メーカーを擁するステランティスグループが、
『 中国での生産から撤退する 』
可能性があるとの報道されました。
既に周知の通り、
中国は自動車業界にとって世界最大の市場です。
が、
中国政府は自国の自動車メーカーを守るための措置として輸入車に対して高い関税を課しています。
なので、
海外メーカーが中国で競争力のある価格を実現しようとすれば、中国で生産を行うしか手がなくなります。
ただし、
簡単に生産ができるかというと、そうは問屋が卸さないのが中国。
基本的には、
『 中国の会社に50%以上の株式を持たせて合弁会社を設立 』
して、
そこでクルマを製造することが必須条件になっています。
狙いは、
『 中国の自動車メーカーへの技術移転 』
です。
ここ最近は規制が緩和されきており、
テスラが自社資本のみで中国生産を行うメーカー第一号になっています。
中国で生産を行う場合、
必ず海外メーカーの技術が現地の合弁会社経由でダダ漏れになります。
こうすることで、
中国の自動車メーカーは技術力の向上と商品力を付けることが可能になっています。
■次に起こること
問題はこれにとどまりません。
中国の自動車メーカーが海外メーカーからの技術を吸収して自社での開発力を身につけるとどなるか。
次は中国の自動車メーカーにとって、提携している海外自動車メーカーの存在が邪魔になってくるのは自明の理です。
要は、
自社の国内における『 プレゼンスを高める 』ために、提携を解消して自社ブランドの生産に切り替えることになる可能性が出てきます。
(実際にジープはすでに契約を解消している)
そうなると、
海外メーカーは中国市場から締め出されたも同然となります。
これは経営の根幹を揺るがす重大事項となります。
そうならないように海外メーカーは中国の提携先に媚を売ったりする必要が出てくることも想定されます。
ただし、
これはこれで健全とは言い難い状態となります。
おそらくは、
こういった事態を考慮して、
ステランティスは『中国での製造から撤退』を決め、資産軽量化戦略を推し進めることにしたのかもしれません。
ちなみに、
・フォルクスワーゲン
・メルセデス・ベンツ
・GM
上記メーカーは中国依存度が高く、
将来的的に大きな不安を抱えていることは間違いありません。
恐らく、
あまりにも中国とドップリな関係なため、中国生産撤退を考えることができないのだと思われます。
が、
刻々と破滅までのカウントダウンが行われており、いつかどこかで決断を下す必要があるとは考えています。
更には、
・BYD
・吉利汽車
など多くの自動車メーカーが、
・魅力的
・安価
といったEVを発売してきており、
海外自動車メーカーは中国でのEV販売に関しては苦戦することが予想されます。
■ステランティスCEOはこう語る
同社のカルロス・タバレスCEOは、
今回のパリ・モーターショーの取材に集まった記者団に対し、
『 この資産軽量化戦略を推し進めるならば、中国に工場は必要ない 』
とコメントしています。
ただしこれは中国市場を捨てるという意味ではありません。
今後は欧州や米国にて生産したクルマを中国へと輸出することを検討するというものになります。
そうなると、
現地販売価格は徐々に関税が下がってきているといえども割高になり、多くの販売機会が喪失する可能性が大です。
同氏は上記も考慮した上で『中国生産を切り捨てる』という発言をしたことになりそうです。
なお、
ジープと中国の広州汽車との合弁は12年にも渡っていますが、
上述の通り今回この関係は精算されており、これに対して広州汽車はジープを非難しています。
同氏は、
『 広州汽車が国営企業 』
であるだけに、
政治的干渉に対しても懸念を示しています。
そういったこともあり、
ステランティスと中国政府との関係性が悪化している可能性もあります。
加えて同氏は、
今後欧州の自動車メーカーが中国でシェアを失うだけではなく、
『 中国車が欧州にも進出してくることで欧州自動車メーカーが市場を喪失する 』
可能性についても言及しています。
加えて同氏は、
『 欧州の自動車メーカーが中国で直面しているのと同様の規制を導入すべきである 』
ともコメントしています。
片や、
BMWはエレクトリック版のミニを英国ではなく中国東部の江蘇省に移し、
長城汽車との提携によって組み立てる計画を進めており、中国に対する姿勢は自動車メーカーによって大きく異なってもいます。
■各方面で進む『中国離れ』
現在、
各方面では中国離れが進んでおり、その大きな理由の一つが『 政治的問題 』です。
これは企業がコントロールすることができません。
中国は一党独裁の国なので、
中国政府が決めたことは『 絶対 』であり、その決定は必ず『 中国の利益にかなう 』ものとなっています。
自動車業界だと、
中国政府が『 明日から上海はロックダウン! 』といえばそれに従うしかなく、
これによって多くの自動車メーカーが苦しめられ、ホンダはついに『 脱中国 』を宣言したほどです。
更には、
ロシアがウクライナへと侵攻しており、
これによって西側諸国と中国との『 互いの見解と立場の相違 』から対立が深まる可能性があります。
これがエスカレートすると、
いつ一方的に中国から締め出されるかもわからないというのが現在の状況となります。
ちなみに、
自動車業界以外で中国が大きな影響力を持っているのが映画界です。
ここしばらくは『トランスフォーマー』など中国マネーを当てにした作品が多く横行していました。
ただ最近は少し事情が変わってきています。
理由は、
中国で映画が公開できるかどうかは、
『 中国政府の意向次第 』
であり、
中国政府が気に入らなければ公開は不可となるからです。
たとえば、
『 シャン・チー/テン・リングスの伝説 』は、
中華系俳優を起用して中国国内での興行収入を見込んだ作品であったものの、まさかの『中国内で上映不可』にw
さらには、
認可が降りなかった理由も明かされてはおらず、
これは出資した中国企業や製作したマーベル・スタジオ、配給側のディズニーにとっては大きな誤算となります。
ディズニー配給の映画だと、
・バズ・ライトイヤー
・ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス
・ソー:ラブ&サンダー
も公開が許可されておらず、
そうなると製作や配給側にとっては、中国を当てにすることは『リスク』でしかなくなるわけです。
実際に、
『 中国離れ 』
の例としてよく知られる作品が、
『 トップガン マーヴェリック 』
です。
当初は中国テンセントの出資にて製作される予定で実際に途中まで製作が進められていました。
その過程で公開された予告編には、
『 トム・クルーズの着るフライトジャケットから日本と台湾の国旗が無くなっていた 』
というのは有名な話です。
(前作では日本と台湾の国旗を掲げたフライトジャケットを着ており、非常に有名なジャケット)
その後、
テンセントが製作から離脱し、めでたくジャケットには日本の国旗が復活し本編公開となっています。
しかし、
自動車業界と同じで、
中国離れを加速させる製作・配給会社と、そうでない会社も存在しています。
・ユニバーサル
・ワーナー・ブラザース(ワイルド・スピードやジュラシック・ワールド、ミニオンズを配給している)
上記企業は比較的中国寄りだと言われています。
(ソニー・ピクチャーズは中国の要求を無視したことがある)
中国離れが進みつつあるにも関わらず、
中国政府の愛国教育のおかげで中国市場は『 中国の作品 』を好む傾向が強いと言われています。
これも自動車業界同様に、
『 力をつけてきた中国のエンタメ業界に押されて、今までのようにイケイケ 』
とはいかなくなる可能性が大です。
・中国から切り捨てられる前に別の道を捜す
・中国にすがり続ける
どうするかは各社の判断に委ねられることになりますが、難しい判断になることは間違いないです。
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