文化財としてのフェラーリ

誰もが知っているフェラーリのクラシックカーは非常に高額なことで有名です。

過去のモデルが高額にて取引されることにより、フェラーリのオーナーは、

「フェラーリは価値が高い」

と認識して新車・クラシックカーに対して高額な対価を支払うことに躊躇がなくなります。

これは

「ブランド価値が向上している」

ということを意味しています。

そうすることで、現行モデルもさらに高い付加価値を盛り込み、より高い価格で販売することが可能となるという仕組みです。

よって現在の自動車業界では、

「販売済みのクルマの価値を高める」

という動きが活発化しています。

メーカー直系の、

「クラシック・レストア部門」

を設ける例が増加しており、国産車メーカーにおいてもパーツの再販やレストアの取扱開始といったトレンドが見られます。

参考までに、腕時計やジュエリー、バッグにおいても同様の傾向があります。

「過去の製品の価値が高くなればなるほど」

そのブランド価値、そして新製品の価格が高くなる傾向がある模様。

(ロレックスやパテック フリップが該当)

フェラーリの歴史上には数多くの名車が存在します。

・250GTO
・365 GTB/4 ディトナ
・ディーノ206/246GT

といったクルマたち。

これらはもちろん、

「クルマ自体が素晴らしい」

といったこともあるかと思いますが、

フェラーリがこれらクルマの価値を維持・向上しようと考え、かつブランド価値を向上させようと実際に行動してきた。

という事実が大きく影響していると考えます。

実際、フェラーリ創業者であるエンツォ・フェラーリは、「ブランディング」の「ブ」の字もなかった時代からブランドを成長させることを考えていたと考えられています。

まず、ブランド価値を向上させる最大の手段は、

「モータースポーツで勝ち続けること」

だと認識してこれを実践しています。

そのほかには、

・クルマを売る相手を選ぶ
・ブランド価値を毀損する相手に容赦なく対処
・常に人々が欲しがるよりも1台少なく作る

という思想からもうかがい知ることができます。

こういった活動はエンツォ・フェラーリが亡くなった後も継続されています。

2006年に設立されたフェラーリ・クラシケ部門は最たる例です。

このフェラーリ・クラシケは、

「マラネッロの至宝、このブランドの遺産を守ること」

を目的に設立されています。

販売済みのフェラーリに関する

・メンテナンス
・レストア
・技術的な支援
・鑑定書(レッドブック)の発行サービス

を行うことを目的としています。

エンツォ・フェラーリは、

「いま、あなたが手にしているフェラーリ(の新車)は、将来のクラシックモデルである」

という言葉を残しています。

つまり、いずれのフェラーリも高い価値を誇るクラシックカーになりうるということを意味しています。

フェラーリは、フェラーリ・クラシケのほかにも、

「新車に対して7年の無償メンテナンスを付与」

するなど、比較的新しいモデルに対してもその価値を維持しようとする努力が見られます。

もちろんこれはフェラーリ側に相当な負担が生じるものです。

それでブランド価値が向上するのであれば、

「安いものである」

という判断なのかなと推測します。

当然ながら、そのいくばくかは車両価格に転嫁されているものと思われます。

そしえ、その車両価格が許容されるのもブランド価値の高さゆえでもあります。

ちなみにフェラーリ・クラシケについてもう少し掘り下げてみると、同サービスを受けるのに製造年は無関係だとそうな。

つまり最新モデルであってもその対象になるということになります。

ただし、鑑定書(レッドブック)発行サービスを受けるには、その車両が製造から20年を経過している必要があるとのこと。

そしてこの「認証」において重要となるのはオリジナリティだとそうな。

つまりは車両が正常に機能したりというコンディションのみではなく、

「工場出荷時の状態が維持されていること」

に重点が置かれている模様。

改造されていたりパーツがオリジナル以外の部品へ交換されていると認証を得ることができなくなります。

ここまでフェラーリがオリジナリティを意識する理由としては、

それぞれのクルマは、それぞれの目的をもって、決まったパーツと方法で機能するように設計・製造されており、よってなにかが変わっているということは、もはや当初の目的を持つクルマをは言えないから。

だそう。

よってフェラーリはこの認証サービスによって、

「そのクルマが設計・製造されたとおりの機能を発揮し目的を果たす」

ことを公的に認めているということになりますが、フェラーリはこれを

「文化財保護」

と呼んでおり、以下のようにコメントしています。

クルマは、時間が経つにつれて元の工場で製造されたのではない部品を取り付けられたり改造されたりしてオリジナルの状態でなくなることがあるものです。

フェラーリ・クラシケの最大の役割のひとつは、そのクルマが製造時のオリジナルとまったく同じ状態であることを保証することです。

それは文化財保護の問題なのです。

「普通」のクルマは寿命の限られた製品として設計されているかもしれませんが、フェラーリはまったく違います。

フェラーリの顧客は、将来的に複数のオーナーの手に渡る可能性のあるクルマのいわば「管理者」です。

フェラーリ・クラシケの使命は、クルマをできる限り長く乗ることができて将来の世代にも楽しめるようにすることです。

さらに、本来の状態を維持することができればクルマの価値は高いまま保たれます。

Ferrari

フェラーリがそのオーナーをして、

「文化財の管理者である」

と明言していることは非常に興味深い表現です。

こういったビジネスを展開できたら面白いだろうなと感じます。
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【本日の名言】『 孔子 / 哲学者 』

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礼を用いるには和の心を大切にしなければならない。

古代の王の統治のやり方も礼の用い方が優れていたのだ。

どんな場合でも礼を尽くせば良いというものではないが、仲間の輪に加わって調和を保とうとしても、礼を忘れていたのでは調和など保てるのもではない。
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