先日、ブルームバーグが主催のカンファレンスが開催されました。
その際、フェラーリCEOベネデット・ビーニャ氏に対し、
「他のスーパーカーメーカーを買収する可能性はあるか?」
と尋ねています。
同氏は、
↓
我々は、他社(スーパーカーメーカー)を買収することには意味がないと考えている。
↑
と述べ、その反面、
「他社(サプライヤー)との協調体制を引き続き注力する」
とコメントしています。
この質問に至るまでの経緯が不明なので、ブルームバーグの質問の意図はわかりかねます。
おそらくは、
・他社の技術を取得するために他スーパーカーメーカーを買収することを検討しているか?
・スーパーカービジネスを拡大し、市場での占有率を向上させるために他スーパーカーメーカーを買収する可能性があるのか?
ということを聞きたかったのではと推測します。
そしてベネデット・ビーニャ氏はこれに対して「NO」と回答しているわけです。
「他社(サプライヤー)との協調体制を引き続き注力する」
という回答をしているあたり、同業他社からの技術移転を図るつもりはないように思えます。
同CEO自身が、
「自動車とは関係のない、電子業界出身者」
です。
同氏がCEOに就任して以降、ほかの重責者の大半を入れ替えています。
これまでのガソリンエンジンの設計やガソリン車そのものの設計に携わった功労者の多くを解任しています。
そのかわりに、
「電子業界とハイブランド業界出身者で固める」
という人事を行っています。
これからのフェラーリに必要なのは、
「過去の技術や考え方ではなく、新しい技術と考え方だと認識している」
のだと思われます。
これは他ブランドとは大きく異なるところになります。
(ポルシェ、アストンマーティン、ランボルギーニ、マクラーレンのCEOは自動車業界出身者である)
そして「他社との協調体制」という点についてもこの方向性が現れており、ジョニー・アイブやマーク・ニューソンとの協業。
そのほか様々なテック業界とのパートナーシップ締結を図っています。
フェラーリは、
「今後流動的に変化してゆくであろう自動車のあり方」
について、
・自社でできることや得意なこと
・他社の得意なことや他社でしかできないこと
をうまく結びつけ、その時その時で最良のプロダクトを生み出してゆこうとしているのかもしれません。
急速に変化し、今後何がどうなるかわからないという不確実な状況なのが現在です。
可能性や方向性を一つに絞るのは、その選択が間違いだと気がついた時には時既に遅しです。
そして新しい分野については、一から自社で開発を行ったのでは時間もかかります。
また、品質を担保できるかどうかわからないという要素もはらみます。
よって、
「スピードを重視」
し、自社が持たない技術については、その分野でトップのパートナーに頼ることにしているのだとも考えられます。
※経営に対する柔軟性を確保したいのだと言い換えてもいいです。
要は、何らかの拍子で情勢がガラリと変わってしまう場合があると認識しているということになります。
その際、
・すぐ方向性を転換できる
・意思決定を素早くできる
といった具合に、会社自体はシンプルにして余分なものを持たないようにしたいのかもしれません。
フェラーリとは異なり、すべてを自社で行うこと、全てのニーズを賄うための手段として買収を活用する自動車メーカーもあります。
また巨大なグループに属するスーパーカーメーカーだと、グループの意向に従わなければならないということも出てきます。
フェラーリとしてはそういった事態を避けたいと考えているのだと思われます。
そして同CEOが付け加えたのが、
↓
フェラーリにとって重要なのはDNAを保持すること。
↑
です。
これは創業当初から貫かれている考え方でもあります。
実際にその通りなのは間違いなく、DNAを希薄化しないためにも他ブランドの買収は避けるべきなのかもしれません。
ここで補足が必要なのは、上述の「他社との協業」によってであればDNAが希薄化しないという部分です。
フェラーリがパートナーを選択するプロセスとしては、以下の通り。
①フェラーリが「これを行う」という明確な方向性をだす。
②同社が実現するために最も優れた企業がどこなのかという選定を行う
という流れです。
つまり、
・フェラーリが「主」
・パートナーが「従」
の関係にあります。
フェラーリの目的を最大の効果にて達成するのがパートナーの役割だと考えられます。
そして、その目的が変わればまたパートナーも変わるということになります。
そうやってフェラーリは、
「最先端の技術を活用し、DNAをよりタイトにしながら」また「状況によってパートナーを変えながら」前に進んでゆくのだろうと考えます。
※後編につづく
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【本日の名言】『 松岡修造 / プロテニスプレイヤー 』
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褒め言葉よりも苦言に感謝。
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