テスラは押し計れない

アメリカ市場においてテスラのシェアが下落し続け、「袋叩きにあっているようだ」との報道がなされています。

2012年にテスラがモデルSを初めて発売した際、市場にEVはほぼ存在せず、「量産車」としては日産リーフが存在していた程度です。

そしてこの過去10年の間、テスラは他の新興EVメーカー、既存自動車メーカーのEVに対して大きく優位性を保っていました。

ただし、直近ではその地位に甘んじ、優位性を失っているとも報じられています。

モデルSの発売以来、多くの自動車メーカーがテスラに

「追いつけ、追い越せ」

とばかりに対抗しうるEVの開発を行ってきました。

そして、ようやく数年ほど前から市場にはそれらのEVが出回り始めています。

今年や来年には一層多くのEVが市場に登場するとも言われています。

こういった、

「テスラをターゲットにしたEV」

が大量に出現し、テスラに挑戦する状況は

「まるで袋叩き」

です。

テスラ自身の成長の冷え込みに加え、競合製品に対する需要の高まりがテスラのアメリカでのEV販売を圧迫し、同社のシェアが減少していると報じられています。

2023年上半期、テスラは大型モデルである、

「モデルX/モデルS」

に対して本格的なフェイスリフトを行ったにもかかわらず、その販売台数が大幅に落ち込んでいます。

【上半期】
・モデルS: -51%
・モデルX: -19%

となっています。

一方のモデル3の登録台数は19%増加し、モデルYの登録台数は95%増加しています。

今年7月末までの数字だと、より安価なモデルが大量に売れたおかげで実際の販売台数は着実に伸びてはいます。

ただ、前年比21%増(主にモデルYの伸びによる)という数字は、テスラが過去に計上した数字よりもはるかに小さいものとなっています。

これは、

「他社がテスラのリードに徐々に追いつき、前年同期比で大幅な伸びを記録している」

のとは真逆の状況です。

最新のデータによると、テスラの北米市場シェアは現在わずか58%だそう。

昨年の同時期からは7ポイントの低下となっているそうな。

これは、ある意味では競争力の低下を意味するのかもしれません。

なお、この競争力の低下については「広告」戦略が大きく影響しているとも言われています。

何故ならテスラは広告宣伝を行わないから。

最近はこの姿勢を変化させることについてイーロン・マスクCEOが言及しています。

ただ、実際には目に見える変化はありません。

一方、GM(ゼネラルモーターズ)はEVの広告に多くの資金を費やしています。

これによって2023年の最初の8カ月間において、2022年比でEV登録台数が3倍近く伸びています。

(もちろんこれだけではない)

ただ、新規参入組の販売がすべて増えているかというとそうでもありません。

たとえばフォード。

シェアは2022年の7.1%から、今年は5.3%に低下してアメリカのEV覇権争いにおいて3位に沈んでいます。

ちなみに、、、

・ヒョンデ:4位
・BMW:5位
・リビアン:6位

といったランク付けになっています。

昨年や過去10年間には存在しなかったEVプレイヤーが、このスペースに大勢いるのは注目すべき事実だと考えます。

こういった報道がなされてはいるものの、個人的には少し違う見方をしています。

現段階でシェアを落とすのは「問題ない」と考えています。

理由はガソリン車市場とは異なり、EV市場は

「パイの取り合い」

ではないということです。

まだ成長過程にあり、シェアが落ちようとも販売台数を伸ばすことが可能だからです。

(実際にテスラはそうなっている)

さらに、今のEV市場にはハッチバックやピックアップトラックなどの、

「テスラがキャッチアップ出来なかったボディタイプ」

が多数存在しています。

それらを求めていた顧客がテスラ以外の選択を行うのは必然です。

よって、ここで見るべきはシェアではなく、

・何台販売したか

そして、

・どれだけ利益を上げたか

さらに言えば、

・継続して伸ばせたか

が焦点となります。

たとえばフォードのように一瞬販売を伸ばしたとしても、

「1台売るごとに数百万円の赤字」

が出たり、次の年に販売を落としてしまっては意味がありません。

同様に、今年伸びたGMも、来年は今年以上の台数を販売できないかもしれません。

逆にテスラはこの状況においても販売を伸ばし続けています。

さらには利益を出し続けており、他の自動車メーカーがこれと同じことをできるかといえ、

「甚だ疑問」

です。

そして、モデルSやモデルXについても、

・メルセデス・ベンツ
・ポルシェ
・アウディ
・BMW
・ルシード

まで参入してきた状況において、ここにこだわる必要はありません。

テスラとしては、

「EVへの理解が浸透し、EVが特別な乗り物ではなくなってきた」

という現状を踏まえ、より低価格のモデル3やモデルYにシフトするのは当然のことだと思われます。

※テスラは先行者利益に甘んじていたわけではなく、様々な未来につながる取り組みを行っているというのが、個人的な解釈です。

実際にテスラの目標は、

「高価なEVを販売し、1台あたりの利益を最大化する」

というメルセデス・ベンツはじめとするジャーマンスリーとは異なり、

「1台でも多く売り、そのためには全米でもっとも安価なEVを提供する」

ことです。

よって、これまでの自動車業界の尺度で測ってはテスラは押し計れないと考えます。

むしろ、モデルSやモデルXのシェアを獲得しようとなだれこんできた自動車メーカーのほうが危機的状況を迎えると考えています。
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