イーロンマスクの決意

テスラCEOのイーロン・マスク氏が第2四半期の決算説明会にて、

我々はいま、激動の時代に生きている。

これを生き延びるためには利益を犠牲にしてでも値下げを行い、生産台数を増加させることを検討している。

とコメント。

ちなみに、この発言ののちには

「利益減少」

を嫌った投資家がテスラ株の売却に動きました。

発言直後には5%。

最終的には前日比で9.74%という大きな下げ幅を記録しています。

テスラは創業時に、

「マスタープラン1」

を発表しています。

そこで掲げたのが、

「全米で最も安価な電気自動車を販売する」

という目標です。

そして安価にするためには生産効率を向上させること。

そのための条件のひとつが生産台数です。

つまり、当初からテスラは、

「より多くの電気自動車を製造する」

という目標を掲げているわけです。

そして、同氏は世界的な石化燃料(枯渇性燃料)からの脱却を目指しています。

そのためには、

「より多くのEVを生産し、ガソリン車からの代替を促す」

という考え方を持っているものと思われます。

こういった考え方は、

「今後は販売台数を気にせず、1台あたりどれくらいの利益を稼げるとかという利益効率を追求してゆく」

と公言したメルセデス・ベンツはじめいくつかのプレミアムカーメーカーとは全く逆の考え方となります。

利益率を重視する自動車メーカーは「利益のため」に動いており、テスラは「環境のため」に動いているという根本的な差異が見てとれます。

そしてテスラは昨年末に米国、中国、欧州で自社モデルの大幅値下げを実施しており、EV市場を震撼させています。

そして、年末以降も何度か値下げを継続することに。

これによってテスラは販売台数を大きく伸ばすことに成功しますが、その代わりに利益も大きく失ってしまい、この点が何度か投資家の非難の的となっています。

ただ、個人的には、

「値下げせずに売れないまま」

よりは、

「値下げしてでも売ったほうがいい」

とも考えています。

かつ中国の新興EVメーカーである、

・NIO
・シャオペン

のように「値下げしても売れない」よりはずっとマシだと捉えています。

そしてイーロン・マスクという人物は初志貫徹の人です。

冒頭のように、

「自社の利幅を圧迫するリスクを冒してでも再び値下げする可能性がある」

ことを改めて強調しており、この値下げについては、

「世界経済は激動の時代にあり、時には難しい決断を迫られることもある」

と説明しています。

なお、テスラの第2四半期における自動車粗利益率(環境クレジット、充電サービスなどを考慮しない数字)は、

「第1四半期の19%から18.1%に低下」

しており、前年同期比の26%に比較すると大幅な下落となっています。

※環境クレジットとは?
温室効果ガス排出量の削減量や吸収量を国が「クレジット」として認証する制度です。

規制値をオーバーしている自動車メーカーに対し、規制値を下回るテスラが「クレジット」を販売して利益を得ています。

さらには、環境クレジットの販売量が減少している可能性が大きいことが挙げられます。

(多くのメーカーがPHEVやEVを発売しているため、規制値のオーバー幅が小さくなりクレジット販売額が減少している)

また、世界中に建設しているギガファクトリーへの投資額が大きいことなどから、

「再びテスラが赤字に陥るのでは」

という見方も相待って、

「今後テスラを取り巻く環境はどんどん厳しくなる」

という人々も少なくはない模様。

※実際
4-6月期全体の売上総利益率は18.2%で、過去16四半期で最低の数字。

ただし、イーロン・マスクCEOにしてみれば、こういった競争激化についても想定の範囲内である模様。

そのため、

「安価で販売できる、コストの安いプラットフォーム」

の開発を急いでいるのだと思われますが、それが発売されるまでは「値下げ」でしのぐしかないのかもしれません。

加えて同氏は、

「今年中に約180万台の納車を達成する」

との見通しを改めて示してはいますが、工場のアップグレードのための計画的なダウンタイムによって、第3四半期の生産台数は若干減少することについても触れています。

(おそらくは新型モデル3製造のため、ラインを入れ替えるのだと推測)

サイバートラックは世界で190万台の注文が入っており、全数の納車には5年間も必要だそうな。

この5年でEV業界のスタンダードが確立されていくと考えると、今後の世界経済や業界動向がどうなるのか注視する必要があります。
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【本日の名言】『 エラ・ウィーラー・ウィルコックス / 作家 』

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吹いている風がまったく同じでも、ある船は東へ行き、ある船は西へ行く。

進路を決めるのは風ではない、帆の向きである。

人生の航海でその行く末を決めるのは、なぎでもなければ、嵐でもない、心の持ち方である。
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